産まれた時から僕には兄さえいればそれで良かった。
この世に僕を産み落としてくれた母でも、今まで育て上げてきてくれた父でも、ましてや誰よりも親身になってくれたフレデリックでもない。僕と見た目も中身もまるで似ていない、血を分けたただ一人の兄が僕にとっては誰よりも愛しくて愛すべき存在であったのだ。昔も今も。
この感情に気づいたのはシェリアが兄に恋心を抱いていると知った瞬間のことだった。あの時の感情の起伏は今でも忘れられない。あの小さくて病弱な守るべき存在を、僕は最低にも心の底から死ねば良いと思ったのだから。兄を好いていいのは自分だけだと、幼心にも深くそう感じた。しかし困ったことにこの感情はシェリアに対してだけでなく、兄自身に対しても表れた。兄は、分かってくれないのだ。僕が誰でもない兄自身のことでこんなにも悩んでいるというのに、彼は誰にでも良い顔をする。こんなにも体の底から貴方を愛しているのに、嫉妬に身をやく僕を、どうして貴方は分かってくれないのか!!



「、ヒュー、バート?」
「………はは、最初からこうすれば良かったんですね」



甲高い叫び声が辺り一面で沸き上がる。ああ、なんて五月蝿い。純白のドレスを着たシェリアは呼吸が出来ないとでも言うかのように唇を忙しなく動かす。ヒューバート、何で、どうして、なんて。兄さんがいなくても生きていけるくせに。馬鹿らしい。







「兄さんは僕の花嫁さんになるんです」







黒いタキシードを着こんだ姿はあまりに似合わない。貴方に似合うのはやはり白ですねと、すでに冷たくなってしまった愛しい人を抱き抱え、そっとその唇に永遠の誓いを込めてキスをした。






永遠を誓う